地盤品質調査

近年の自然災害

 近年、全国各地において、地震や集中豪雨などが頻発しています。これらの自然災害によって引き起こされる地盤の沈下やがけ崩れなどにより、宅地に甚大な被害が及んでいます。

宅地ををめぐる災害は、わが家の宅地内だけで起こることもあれば、ご近所に影響を及ぼしたり、逆にお隣の住宅の被害が、わが家の宅地に及ぶこともあります。 また、地域全体が被害を受けることもあります。
 このため、宅地をめぐる災害の対策は、住民の皆様ひとりひとりが対処し防ぐことのできるもの、お住まいの地域の自治会などのグループで連携・協力して対応する必要があるもの、 地域の自治体と協働して対応する必要があるものや、防ぐことが難しく情報の収集や早めの避難などを考えた準備が必要なものなど様々です。
 このよような宅地をめぐる災害を防ぎ被害を減らすためにはまず、住民の皆様ひとりひとりが宅地をめぐる災害について身近な問題であることを認識し、必要な準備や対策をを行うことが大切です。

宅地の災害事例

宮城県沖地震

宮城県沖地震(1978年6月12日)

仙台市などの住宅団地において、盛土地盤の変状や、石積み擁壁の倒壊、ライフラインの被害などが見られ、宅地造成地が抱える災害に対しての問題が浮き彫りにされました。

日本海中部地震

日本海中部地震(1983年5月26日)

秋田市や能代市などにおいて、湖を埋めた干拓地、河川周辺の平野部、沼や湿地を埋め立てた造成地などで大規模な液状化発生し、多くの住宅に甚大な被害をもたらしました。

広島豪雨

広島豪雨(1999年6月29日)

梅雨前線に伴う豪雨により、広島市・呉市を中心にがけ崩れ・土石流といった土砂災害が多発し、斜面周辺の宅地に大きな被害を及ぼしたうえ、多数の犠牲者が出ました。

新潟県中越地震

新潟県中越地震(2004年10月23日)

長岡市の団地などで、盛土した地盤全体が滑る滑動崩落が発生し、宅地に大規模な被害が発生しました。

このような被害は、あらかじめ宅地の点検などを行って必要な対策をしておくことで、宅地への被害を防ぐことのできるものも多くあります。 大切なわが家の宅地を守るために、皆さまご自身で点検を実施しましょう。

わが家の宅地点検

①不同沈下

■不同沈下とは?

おもに宅地の地盤が軟弱なことが原因で、地盤が局所的に沈んで建物などが傾くことを言います。何年もかけて沈下が進む場合もあれば、地震時の液などで急激な不同沈下が起こることもあります。

■点検のポイント

①住宅の外壁や基礎などに、ひび割れはありませんか?

不同沈下の初期段階には、モルタルの外壁や住宅周囲の犬走りと呼ばれるコンクリート仕上げ部分にひび割れが生じたりすることがあります。沈下が進むと、基礎のひび割れなどが生じ、建物の構造に大きなダメージを与えます。

外壁のひび割れ外壁のひび割れ
犬走りのひび割れ犬走りのひび割れ

②擁壁やブロック塀に、ひび割れや継ぎ目の開きはありませんか?

擁壁(ようへき)やブロック塀をささえる地盤が軟弱だと、ひび割れや継目の開きが生じやすくなります。住宅にひび割れや傾きが無くても、宅地全体が沈下を生じやすい地盤であるおそれがあります。

擁壁(コーナー部)のひび割れ擁壁(コーナー部)のひび割れ
擁壁及びブロック塀の継目の開き擁壁及びブロック塀の継目の開き

③道路などに、沈下やずれはありませんか?

地盤が軟弱な場合、周辺の道路や道路脇の側溝にも、沈下によるひび割れやずれなどの変状が現れる場合があります。

側溝の継目のずれ側溝の継目のずれ

①擁壁(ようへき)

事例擁壁の倒壊により宅地被害の事例

■擁壁(ようへき)とは?

宅地を造成する際などに土砂が崩れるのを防ぐために設けるコンクリートやブロックなどからなる壁のことをいいます。 擁壁の代表的なタイプとして「鉄筋コンクリート擁壁」「間知ブロック積み擁壁」などがあります。
 構造的に不安定な工法となっている場合や、老朽化などにより機能が低下している場合は倒壊などのおそれが生じます。 擁壁に傾きが生じたり倒壊したりすると、宅地や建物に被害を与えるとともに、隣地へ影響を及ぼすこともあります。

■点検のポイント

①不適切な工法や設置の状況になっていませんか?

次のような擁壁の場合は不安定なものが多く注意が必要です。

玉石積み擁壁(表※1)

高さが高くなるほど不安定になります。

増し積み擁壁(表※2)

下の段の擁壁を作る際に、その上に2段目の擁壁分の土圧がかかることを想定していない工法です。
玉石積み擁壁 ※1 石を積み重ねただけなど、コンクリートで一体化していない擁壁(空積み擁壁)
増し積み擁壁 ※2 ブロックなどで継ぎ足して造られた擁壁
張出し床版付擁壁 擁壁の上部に床版を張り出して設けてあるもの
二段擁壁 擁壁のすぐ上に別の擁壁が設けられているもの




②ひび割れ、ずれ、ふくらみ、傾きなどの変状はありませんか?


・ひび割れが発生している場合
・目地に前後・上下のずれがある場合 ※画像A
・ふくらみが見られる場合 ※画像B
・傾きや折れている部分が見られる場合

目地の上下のずれ(画像A)

ふくらみが見られる場合(画像B)



③排水機能は低下していませんか?

排水機能が低下すると、擁壁に無理な負担がかかります。
擁壁の上や下に排水溝がある場合には、そこに土などがたまっていないか確認しましょう。
また、擁壁に水抜き穴が設けられているか、詰まりがないかを確認しましょう。

③がけ崩れ

■かげ崩れとは?

おもに降雨や地震などによって急激に斜面が崩れ落ちることをいいます。がけの高さの2倍程度の範囲まで土砂が到達することもあります。 がけ崩れは突然起こり、人家の近くで起きると逃げ遅れる人も多く、死者の割合も高くなっています。

■点検のポイント

がけ崩れに備えるには「自分の身は自分で守る」ことが基本となります。皆様の宅地の近くにがけがある場合に、がけが自らの土地ではない場合であっても 日頃より点検しておき、その状態の変化に気をつけましょう。


①がけの形状や表面、雨水や湧水の状況に注意すべき点が見られますか?


がけ崩れは、がけの形状や表面の状態のほか、雨水などの影響によっても発生しやすくなります。このため以下の図のような状況がみられる場合は要注意です。



②無理な切土をしていませんか?


斜面の土を削り取ることを切土といいます。平坦な宅地を造る際に切土を行い、そのときにできる新たな急勾配の斜面(おおむね30度以上)を そのままにしておくと、がけ崩れが発生するおそれが高くなります。

無理な切土の斜面

わが家の宅地をめぐる災害~知っておきましょう~

自然災害によって生じる宅地の被害には、個人や地域の自治会などのグループによる点検を行っても防ぐことが困難なものもあります。 このような災害に対応していくために、住民の皆様は、まずは災害の発生原因や関連情報を知ったり、自治体が公表するマップなどを活用することから、 災害リスクを理解することが大変重要です。

事例滑動崩落による被害状況(兵庫県南部地震)

■盛土の滑動崩落

滑動崩落とは、造成した大規模な盛土の全体が地震時に滑る現象をいいます。平成7年の兵庫県南部地震、平成16年の新潟県中越地震などの大地震時において 多く発生し、住宅や道路、ライフラインのみならず、周辺にも多くの被害を及ぼしました。


■土砂災害

がけ崩れ

豪雨や地震などの影響によって急激にがけの表面が崩れ落ちることをいいます。がけ崩れは突然起こるため、人家の近くで起こると逃げ遅れる人もあり、死者の割合も高くなっています。

地すべり

地下水などの影響により、斜面が広範囲でゆっくりと下方に移動する現象をいいます。移動する土の量が大きいため、甚大な被害を及ぼします。豪雨や地震の影響で急激に加速する場合もあります。

土石流

山腹、川底の石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へ押し流される現象をいいます。時速20~40kmという速度で、一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させてしまいます。

■水災害

代表的な水災害としては、洪水、津波、高潮があげられます。これらの災害により影響を受ける区域や避難地などを示したハザードマップを公表している自治体もありますのでご確認ください。

洪水による宅地浸水状況(撮影:静岡大学防災総合センター准教授牛山素行氏)
津波による被害状況(撮影:静岡県)
高潮による浸水状況

参考:国土交通省 都市・地域整備局都市・地域安全課 都市・地域防災対策推進室 (平成21年3月)「わが家の宅地安全マニュアル」より